イセエビは年に数回の脱皮を繰り返して成長します。
脱皮をした直後のイセエビの全身は殻になる前の皮の状態なので、柔かく、頭から丸ごと全部食べる事ができます。最大の特質と不思議は表面だけが新しくなるのではなくて、内臓も身も全てが新しく生まれ変わるところにあります。長年に渡る研究と経験、そして脱皮をさせて生け捕る技術を身に付けたことによって多くの脱皮伊勢海老を収穫できるようになり、商品化できました。なお、倭庵黒石では、令和元年を記念して、脱皮伊勢海老を「常若伊勢海老(Tokowakaiseebi)」と命名致しました。
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海老との出会い。
2008年頃のある日に、お店の水槽の水面に一尾の伊勢海老が泳いでいました。伊勢海老が浮くことはないので不思議に思い取り上げてみると、なんとそれは伊勢海老の抜け殻だったのです。(この時に初めて伊勢海老が脱皮をするという事を知る)
ある日市場で、脱皮した後の柔らかい伊勢海老が偶然にも売られていました。
本来は、この柔らかい伊勢海老は、気持ちが悪いと売りものにならない商品として、店頭には並ばずに、漁師さんらで試食されていたものでした。
一度食べてみようと興味がわいて、買って帰りました。
包丁で半分に割ってみると、ミソはたっぷりと入っているし、身質はキラキラと素晴らしい艶色です。直ぐさまに美味しいに違いないと確信しました。
そして、油を使って炒めたら全部食べれるという発想を思いつきました。
身と殻を同時に食べる旨味は、今までの伊勢海老料理では味わえなかったもので未知の味でしたが、ストレートで濃厚な味わいに衝撃を覚えました。
脱皮伊勢海老が美味しく特別であるという事は分かったけれどどうしたらメニューに載せて売るだけこの素材が用意できるのか?という、困難に向き合う毎日となります。
それから数年かけて、色々と情報を集めたり、勉強して、脱皮する前に出る兆候(変化)がわかるようになりました。ここが大きなポイントで転機でした。
これから脱皮するであろう伊勢海老(脱皮予備軍)だけを集めてきて、脱皮するのを待つて収獲します。
でも、夜行性であるために夜中や朝方に脱皮する習性があって、見つけるのは至難の業(徹夜の監視が必要)でした。
脱皮を見逃して2時間もすると堅くなってしまい、丸ごと全部が食べれなくなって残念ながら価値はなくなります。
また脱皮の前や途中で死んでしまう伊勢海老をありましたから、ほんとに収獲するのは難しかったです。
でも、諦めずに、経験を積み重ねて徐々に脱皮海老を収獲出来るようになっていきました。
脱皮をしたら、成長を止めるために直ぐに活〆にして、急速冷凍機で一時保存しておきます。
高価なものですし、知名度もないからそうそうに出るものではありませんでしたが、今日までテレビでは40本以上に取り上げて頂きまして、お陰さまで全国区となってまいりました。
また2018年に、脱皮海老収獲用のためにお店の水槽を増設致しましたが、2022年には脱皮収穫専用の建屋を新築致しました。こちらでは、DXを使った最新の設備(AI脱皮感知カメラ)と、最良の蓄養水槽(五木田モデル)を完備しました。
今後も更なる研究と経験を積んで、脱皮伊勢海老料理を世界に発信していきたいと考えております。